信仰・歴史日本百観音秩父三十四箇所

秩父札所5番 語歌堂|准胝観音と本間孫八の歌語りの伝承

信仰・歴史
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参拝日:2026年10月12日(月)

 語歌堂は、秩父三十四箇所の5番札所で、武甲山を望む横瀬町の田園の中に建つ観音堂です。本尊の准胝観音は、日本百観音の中でも2か所にしか祀られていない珍しい観音です。この記事では、堂名の由来の伝承、御詠歌、アクセスをまとめています。御朱印は約250m離れた別当の長興寺で受けるため、語歌堂と長興寺を続けて回ると無理なく巡れる札所です。

語歌堂の歴史と信仰

准胝観音を祀る秩父札所5番の観音堂

 語歌堂(ごかどう)は、埼玉県秩父郡横瀬町にある臨済宗南禅寺派の観音堂で、山号を小川山といいます。秩父三十四箇所の5番札所で、4番金昌寺から武甲山を正面に見ながら、田園の中の道を1.3kmほど進んだところにあります。

 境内に建つのは、仁王門と観音堂の二つの建物です。語歌堂は、昭和48年(1973年)に横瀬町の史跡に指定されました。

長享の番付では26番「五閣堂」

 長享2年(1488年)の年紀をもつ「長享の秩父札所番付」では、この札所は26番の「五閣堂」として載っています。今の5番とは、番号も表記も異なります。

 秩父札所全体の成り立ちは、秩父三十四箇所のまとめ記事で紹介しています。西国・坂東と合わせた百観音については、日本百観音のまとめ記事をご覧ください。

堂名は本間孫八と旅の僧の歌語りに由来

 語歌堂を建てたのは、別当の長興寺の檀徒だった本間孫八と伝えられています。孫八は、慈覚大師の作と伝わる准胝観音を祀るために、この観音堂を建てたといいます。慈覚大師は、平安時代の天台宗の僧の円仁のことです。

 孫八は和歌を好みましたが、歌の道の奥深さを知らないことに悩み、観音堂にこもって祈りました。すると一人の旅の僧が訪れ、二人は夜を徹して和歌の奥義を語り合ったとされています。明け方近くになると、僧は姿を消していたといいます。

 旅の僧は、聖徳太子の化身とも、救世観音が姿を変えたものともいわれています。歌を語り合ったこの話から、観音堂は「語歌堂」と名付けられたと伝えられています。江戸時代の末に出た札所の霊験の絵入り本『観音霊験記』にも、この話は描かれました。

本尊の准胝観音は百観音で2か所だけ

 御本尊は准胝観世音菩薩で、慈覚大師の作と伝えられています。ふだんは公開されていない秘仏で、12年に一度の午歳総開帳の年に御開帳されます。

 准胝観音は、仏たちの母を意味する「仏母(ぶつも)」とも呼ばれる密教の観音です。災いを除き、命を延ばす功徳があるとされています。語歌堂の准胝観音は「子返し観音」とも呼ばれています。

 西国・坂東・秩父の日本百観音のうち、准胝観音を本尊とするのは、5番語歌堂と西国11番の醍醐寺の2か所だけです。醍醐寺の准胝観音は、平成20年(2008年)の落雷で上醍醐の准胝堂が焼けたあと、下醍醐の観音堂にまつられています。

観音堂は文化年間に青年棟梁が建てたとされる

 今の観音堂は、文化年間(1804〜1818年)の建物です。地元出身の若い棟梁が、初めて手がけた堂だと伝えられています。

 堂は7.2m四方で、屋根は四方から頂点に集まる宝形造(ほうぎょうづくり)です。堂内の格天井には、龍や雀などがあしらわれているとされます。

享保5年(1720年)に今の場所へ移ったとされる

 語歌堂が長興寺の持ち物になった時期は、分かっていません。長興寺の境外の仏堂として今の場所に移ったのは、享保5年(1720年)とされています。

別当寺と観音堂という札所本来の形を残す

 語歌堂に住職はおらず、管理は別当寺の長興寺が担っています。別当寺とは、観音堂や神社を管理する寺のことです。長興寺は語歌堂から東へ約250mのところにある臨済宗の寺で、5番の御朱印もここで受けます。

 観音堂と、それを管理する別当寺が組になった姿は、札所本来の形を残すものとされています。

朱塗りの仁王門と塀のない開けた境内

 道に面して、朱塗りの仁王門が建っています。境内には塀などの囲いがなく、田畑に開かれたつくりで、晴れた日には武甲山を望めます。

 境内の南西には、明治・大正時代に祭礼の花火を打ち上げた大筒が、平成14年(2002年)まで置かれていたとされます。花火の奉納を通じて、地域とのつながりが深かったことがうかがえます。

語歌堂の基本情報

語歌堂の基本データ

項目内容
札所秩父三十四箇所 5番
山号・堂名小川山 語歌堂(ごかどう)
宗派臨済宗南禅寺派
本尊准胝観世音菩薩
所在地埼玉県秩父郡横瀬町横瀬6119
納経所長興寺(埼玉県秩父郡横瀬町横瀬6086)
電話0494-23-4701(長興寺)
拝観料無料
文化財横瀬町指定史跡(昭和48年(1973年)指定)
縁日5月8日(降誕会・花祭り)
駐車場語歌堂の近くにあり(無料。普通車・マイクロバス可、大型バスは不可)

御詠歌は観音の大慈大悲の誓いをたたえる

 語歌堂の御詠歌は、次の一首です。

父母の 恵みも深き 語歌の堂 大慈大悲(だいじだいひ)の 誓いたのもし

 語歌の堂の観音は、父母の恵みのように深い慈しみをもっている。人々を大きな慈悲で救おうとする観音の誓いは、頼もしいことだ、という意味の歌です。

御朱印は約250m東の長興寺で受ける

 語歌堂には納経所がなく、御朱印は別当の長興寺で受けます。語歌堂から長興寺までは約250mで、歩いて3分ほどです。

項目内容
受付場所長興寺(語歌堂から約250m、徒歩3分)
受付時間(3〜10月)8:00〜17:00
受付時間(11〜2月)8:00〜16:00
昼休み12:00〜12:30
納経料(御朱印)500円
重ね印(2巡目以降)200円
休みなし(年中無休)

 御朱印には、右上に「秩父第五番」、中央に准胝観音を表す蓮華座に宝珠の印、左下に「渓苔山長興寺」の印が押されます。墨書は、右に「語歌堂」、中央に観音菩薩のいる場所を示す「大悲殿」、左に「長興寺」です。

総開帳の期間中は記念印と散華がある

 令和8年(2026年)は、12年に一度の午歳総開帳の年です。期間は3月18日から11月30日までで、各札所で秘仏の御本尊が御開帳されます。期間中は、御本尊とつながる御手綱に触れることができます。

 御朱印には総開帳の記念印が加わり、御朱印を受けた人には散華が授与されます。2巡目以降の重ね印にも、記念印が押されます。拝観料はかかりません。

語歌堂バス停から徒歩約3分

交通手段経路
バス西武秩父駅から西武観光バス「定峰・皆野駅行き」で約15分、「語歌堂」下車、徒歩3分
徒歩4番金昌寺から約1.3km、20分ほど
車4番金昌寺から約1.5km、約5分

 バスは、2番から4番の最寄りの停留所と同じ路線です。帰りのバスの時刻も前もって調べておくと、計画を立てやすくなります。

駐車場は語歌堂の近くにあり無料

 駐車場は語歌堂の近くにあり、料金はかかりません。普通車とマイクロバスが利用でき、大型バスは停められません。車で巡る場合は、語歌堂の近くに停めて参拝し、そのまま約250m先の長興寺まで歩いて御朱印を受けると、2か所を続けて回れます。

4番から約1.3km、6番卜雲寺へは約2.7km

 4番金昌寺から語歌堂までは約1.3kmで、歩いて20分ほどです。住宅の多い道を抜けると、武甲山を正面に見ながら田園の中を進む道になります。

 次の6番卜雲寺までは、長興寺から約2.7kmで、歩いて40分ほどです。車なら約7分で着きます。前後の札所の歴史や見どころは、4番金昌寺の記事と、6番卜雲寺の記事で紹介しています。

御本尊の撮影は禁止されている

 秩父三十四箇所では、すべての札所で御本尊の撮影が禁止されています。境内や長興寺の撮影は、現地の掲示や寺の案内に従ってください。

語歌堂の参拝記録

 実際の参拝記録をご紹介していきます。秩父札所5番 語歌堂には、2026年10月12日に参拝しました。札所1番 四萬部寺と札所2番 真福寺、札所3番 常泉寺、札所4番 金昌寺と同じ日でした。この日は、1番から5番で完了です。夕暮れギリギリでした。

朱塗りの仁王門から境内へ

語歌堂の敷地の前は、車も通る道路となっており、生活と地続きな感じがします。朱塗りの仁王門を通って境内へ入らせていただきます。

 境内に入って行くと左手に吽形が、

 右手に口を開けている阿形がいらっしゃいます。

 朱塗りの仁王門には、赤い体の仁王像が左右に立ち、境内を守っています。口を開けた阿形と、口を閉じた吽形の一対です。

ぼいど
ぼいど

やっぱり仁王像の迫力は凄いです!眼力が強い!!

 仁王門には「阿吽」と書かれた額や、詩人・坂村真民の言葉「念ずれば花ひらく」の奉納額が掛けられ、柱や梁には参拝者が貼った千社札がびっしりと残っています。

 そして逆側には、風神さまと、

 雷神さまがいらっしゃいます。神仏習合を感じます。

観音堂で准胝観音に参拝する

 観音堂には、御詠歌を金色の文字で書いた大きな額が掛かっています。文化年間(1804〜1818年)に江戸の麹町の人が奉納したもので、今の観音堂が建てられたころのものです。まわりには参拝者が貼った千社札が、天井までびっしりと残っています。

 前の章で紹介した『観音霊験記』(江戸時代の末に出た、札所の霊験の絵入り本)に描かれているイラストです。日光と雨風に当たらないところにあるので、綺麗な状態で残っていました。

 観音堂の手前の藤棚の下には、「馬頭観世音」と刻まれた大きな石碑も建っていました。馬頭観音の石碑は、馬の安全や供養を願って建てられることが多いそうです。

 最後に徒歩3分で行ける長興寺にある納経所で、御朱印をいただいて終了です!お疲れ様でした!!

語歌堂がおすすめな人

珍しい准胝観音にお参りしたい人

 准胝観音を本尊とする札所は、日本百観音の中で語歌堂と西国11番の醍醐寺だけです。秩父・坂東では語歌堂だけなので、百観音を巡る人にとって覚えておきたい札所です。

和歌や札所の伝承に関心がある人

 本間孫八と旅の僧が夜通し和歌を語り合ったという話が、そのまま堂の名前になっています。伝承を知ってから観音堂の前に立つと、小さな堂の印象が深まります。

札所の古い形を見てみたい人

 観音堂と別当寺の長興寺が組になった、札所本来の形を残しています。江戸時代後期の観音堂と朱塗りの仁王門だけが建つ、簡素な境内も見どころです。

1番から順に、無理なく札所を巡りたい人

 4番金昌寺から歩いて20分ほどで、語歌堂の近くには無料の駐車場もあります。御朱印は近くの長興寺で受けるため、語歌堂と長興寺を続けて回る計画にしておくと、迷わずに巡れます。

参考資料

  • 5番 語歌堂/秩父札所連合会/https://chichibufudasho.com/fudasho/gokado/ /確認日:2026年10月26日(本尊、宗派、御詠歌、長享番付、本間孫八の建立、旅の僧の伝承、准胝観音が百観音で2か所だけであること、准胝観音の功徳、子返し観音、武甲山の眺め、納経所の長興寺と距離、縁日、電話、駐車場の車種の条件、バス、4番からの時間)
  • 札所一覧/秩父札所連合会/https://chichibufudasho.com/fudasho/ /確認日:2026年10月26日(4番からと6番までの距離・時間、長興寺の所在地)
  • よくある質問/秩父札所連合会/https://chichibufudasho.com/faq/ /確認日:2026年10月26日(受付時間、御朱印料、重ね印、定休日、駐車料、入山料)
  • 御朱印解説(PDF)/秩父札所連合会/https://chichibufudasho.com/wp-content/uploads/2025/09/御朱印解説.pdf /確認日:2026年10月26日(御朱印の印と墨書、長興寺の山号)
  • 午歳総開帳/秩父札所連合会/https://chichibufudasho.com/soukaicho/ /確認日:2026年10月26日(御開帳、御手綱、記念印、散華、重ね印の記念印、拝観料)
  • 秩父札所午歳総開帳 特設サイト/秩父札所連合会/https://event.chichibufudasho.com/ /確認日:2026年10月26日(総開帳の期間)
  • 秩父札所連合会 公式Instagram(@chichibufudasho)/秩父札所連合会/https://www.instagram.com/chichibufudasho/ /確認日:2026年10月26日(御本尊の撮影禁止)
  • 第十一番 上醍醐 准胝堂/西国三十三所札所会/https://www.saikoku33.gr.jp/place/11 /確認日:2026年10月26日(西国11番の准胝観音、准胝堂の焼失と今の安置場所)
  • 札所五番語歌堂/横瀬町/https://www.town.yokoze.saitama.jp/shisetu-bunka/bunkazai/708 /確認日:2026年10月26日(町指定史跡と指定年、所在地、本間孫八と旅僧の伝承、観音堂の時代・青年棟梁・大きさ・屋根の形、別当寺の長興寺、札所本来の形、花火の大筒)
  • 秩父札所 5番 語歌堂/秩父札所 おもてなし(多言語サイト)/https://www.chichibu-omotenashi.com/fudasho/fudasho34/temple_05/ /確認日:2026年10月26日(旅の僧を聖徳太子とする伝承、准胝観音の呼び名、納経所までの時間)
  • 語歌堂(秩父三十四所観音霊場・札所5番)/ニッポン旅マガジン/https://tabi-mag.jp/sa0082/ /確認日:2026年10月26日(子返し観音の別名、旅の僧の伝承、『観音霊験記』、長興寺の方角と距離、札所本来の形、バスの所要時間)
  • レンタカーで秩父札所巡り(札所1番から7番)コース/埼玉県/https://www.pref.saitama.lg.jp/b0112/kanko-tiiki-info/renta8.html /確認日:2026年10月26日(旅の僧を聖徳太子とする伝承、御朱印は長興寺、長興寺の所在地)
  • 小林祐一『秩父三十四ヶ所 札所めぐり 観音霊場巡礼ルートガイド 改訂版』(メイツユニバーサルコンテンツ、2022年)(本間孫八と旅の僧の伝承、旅の僧を救世観音とする伝承、准胝観音の説明と百観音で2か所だけであること、秘仏、観音堂の宝形造と格天井、享保5年の移転、無住と長興寺、長興寺の方角と距離、朱塗りの仁王門、塀のない境内、武甲山の眺め、4番からの道、バスの所要時間)
  • 横瀬町教育委員会 現地説明板「札所五番 語歌堂」(2026年10月 筆者撮影)(町指定と指定年、本尊、別当長興寺、本間孫八と旅僧の伝承、文化年間の青年棟梁、札所本来の形)
  • 語歌堂の現地確認(2026年10月 筆者現地確認)(駐車場の場所、朱塗りの仁王門、塀のない境内)

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