
参拝日:2026年10月12日(月)
真福寺は、秩父三十四箇所の2番札所で、高篠山の中腹に観音堂が建つ山の寺です。長享2年(1488年)の番付にはなく、のちに加わって秩父札所は34か所になりました。この記事では、大棚禅師の伝承と歴史、御詠歌、御朱印、アクセスをまとめています。寺は無住のため、観音堂で参拝したあと、山を下った光明寺で御朱印を受けるのが真福寺の巡り方です。
真福寺の歴史と信仰

大棚禅師と老婆の伝承が寺の始まり

真福寺は、秩父市山田にある曹洞宗の寺で、山号を大棚山(おおだなざん)といいます。秩父三十四箇所の2番札所で、1番四萬部寺から山道を登った高篠山の中腹にあります。
寺の始まりには、大棚禅師と一人の老婆の話が伝えられています。禅師がこもっていた鬼丸という岩窟に、老婆がたびたび観音を拝みに来ました。わけを尋ねると、老婆は里の農家の妻で、嫉妬や欲の心から鬼のような身になり、観音にすがって救いを求めていると語ったといいます。
老婆は竹の杖を禅師に差し出し、そのまま姿を消したとされています。禅師はこの出来事を観音の霊験と受け止め、堂を建てて観音を祀りました。これが真福寺の始まりと伝えられています。開基の時期を9世紀ごろとする見方もあります。
寺の周りには、大棚川など「大棚」の名が付く地名があります。この地名は、禅師の名にちなむと伝えられています。
長享の番付になく、34番目の札所に加わった
秩父札所の古い姿を伝える「長享の秩父札所番付」は、長享2年(1488年)の年紀をもつ番付です。ここに載る札所は33か所で、真福寺は入っていません。今の札番では2番ですが、もとは番付の外にあった寺です。
札所に加わった経緯は、資料によって書き方が異なります。長享(1487〜1489年)のころに水害を受けて札所から外れ、信者の強い願いで間もなく34番目の札所になったという伝えがあります。一方で、16世紀の初めごろに33か所へ1か寺が加わったとする資料もあります。
33か所に1か寺を足したのは、西国・坂東と合わせて百か所にするためだったとする見方もあります。天文5年(1536年)に30番法雲寺へ納められた古い札には「西国坂東秩父百ヶ所」と記されています。このころには、日本百観音として数えられていたと考えられています。
秩父札所全体の成り立ちは、秩父三十四箇所のまとめ記事で紹介しています。西国・坂東と合わせた百観音については、日本百観音のまとめ記事をご覧ください。
光明寺の末寺となり、江戸初期に今の地へ
真福寺は、天文年間(1532〜1555年)に、ふもとにある光明寺の末寺になったとされています。札所に加わったころの観音は、今の場所ではなく、「古堂」と呼ばれる場所に祀られていました。
江戸時代の初めに、寺は今の高篠山の中腹に移りました。光明寺4世の鉄巌禅師が、この地で真福寺を再び興したといわれています。宗派はもとは真言宗で、のちに曹洞宗に改められたとされています。
万延元年(1860年)の火災で伽藍の多くを失った
江戸時代の真福寺は、山の上に多くの堂を構えていました。観音堂のほかに、本堂、札堂、仁王門、羅漢堂、稲荷社、諏訪社などがあったといわれています。当時の観音堂は南向きで、五間半四面の大きさでした。
これらの堂の多くは、万延元年(1860年)の火災で焼けてしまいました。このとき御本尊は無事に運び出され、脇侍もわずかな焼け跡が残る程度で済んだと伝えられています。焼け残った須弥壇や彫刻の一部は取り出され、今の観音堂に使われています。
観音堂は明治41年(1908年)の再建
今の観音堂は、明治41年(1908年)に再建された建物です。屋根は入母屋造で、正面と側面がそれぞれ三間の大きさがあります。今の真福寺は住職のいない無住の寺で、山の上には観音堂だけが建っています。
見どころは、正面の向拝の軒下に彫られた龍です。向拝とは、堂の正面に張り出した屋根の部分のことで、真福寺ではこの部分の意匠に特に手が込んでいます。札所2番の真福寺は、昭和40年(1965年)に秩父市の史跡に指定されました。
本尊は室町時代の作といわれる聖観世音
御本尊は聖観世音菩薩の立像です。一本の木から彫り出した一木造で、高さは64cmあります。室町時代の作といわれています。
万延元年(1860年)の火災のときに運び出され、難を逃れた像です。ふだんは公開されていない秘仏で、12年に一度の午歳総開帳の年に御開帳されます。
真福寺の基本情報
真福寺の基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 札所 | 秩父三十四箇所 2番 |
| 山号・寺号 | 大棚山 真福寺(おおだなざん しんぷくじ) |
| 宗派 | 曹洞宗 |
| 本尊 | 聖観世音菩薩 |
| 所在地 | 埼玉県秩父市山田3095 |
| 納経所 | 光明寺(埼玉県秩父市山田2191) |
| 電話 | 0494-22-1832(光明寺) |
| 拝観料 | 無料 |
| 文化財 | 秩父市指定史跡(昭和40年(1965年)指定) |
| 駐車場 | あり(真福寺・光明寺ともに。無料。普通車可、マイクロバスは場合による、大型バス不可) |
御詠歌は大棚の谷川の水を詠む
真福寺の御詠歌は、次の一首です。
廻り来て(めぐりきて) 願いをかけし 大棚(おおだな)の 誓い(ちかい)も深き 谷川の水
巡り歩いてたどり着き、願いをかけた大棚の観音の誓いは、谷を流れる水のように深い、という意味の歌です。寺名ではなく、禅師の名にちなむ地名「大棚」が詠み込まれています。山あいの観音堂の景色と重なる一首です。
御朱印は山を下った光明寺で受ける

真福寺は無住の寺のため、御朱印は観音堂では受けられません。山を下ったところにある光明寺が、2番の納経所です。観音堂の前の説明板の下にも、御朱印は光明寺で受けるよう案内する木札があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受付場所 | 光明寺(秩父市山田2191) |
| 受付時間(3〜10月) | 8:00〜17:00 |
| 受付時間(11〜2月) | 8:00〜16:00 |
| 昼休み | 12:00〜12:30 |
| 納経料(御朱印) | 500円 |
| 重ね印(2巡目以降) | 200円 |
| 休み | なし(年中無休) |
光明寺から観音堂までは、歩いて35分ほどかかります。観音堂で参拝してから光明寺へ下りるか、光明寺から登って参拝するかを、先に決めておくと迷いません。雪の日は、御朱印の受付が閉まる場合もあります。
光明寺は、鎌倉時代の創建とされる曹洞宗の寺です。門前には仁王像が立っています。
総開帳の期間中は記念印と散華がある
令和8年(2026年)は、12年に一度の午歳総開帳の年です。期間は3月18日から11月30日までで、各札所で秘仏の御本尊が御開帳されます。期間中は、御本尊とつながる御手綱に触れることができます。
御朱印には総開帳の記念印が加わり、御朱印を受けた人には散華が授与されます。2巡目以降の重ね印にも、記念印が押されます。拝観料はかかりません。
光明寺入口バス停から観音堂まで徒歩約40分
| 交通手段 | 経路 |
|---|---|
| バス | 西武秩父駅から西武観光バス「定峰・皆野駅行き」で約20分、「光明寺入口」下車。光明寺まで徒歩5分、光明寺から観音堂まで徒歩35分 |
| 徒歩 | 1番四萬部寺から約2.1km、徒歩45〜50分ほど |
| 車 | 1番四萬部寺から約2.1km、約5分 |
バスで訪れる場合は、先に光明寺へ寄ってから観音堂へ登る順番になります。帰りのバスの時刻も前もって調べておくと、計画を立てやすくなります。
駐車場は真福寺・光明寺の両方にある
駐車場は、真福寺の観音堂の近くと、納経所の光明寺の両方にあります。料金はかかりません。普通車が利用でき、マイクロバスは停められない場合があり、大型バスは入れません。車で訪れる場合は、観音堂で参拝してから光明寺へ移動して御朱印を受けられます。真福寺と光明寺の間の山道は、急なカーブが続き、道幅の狭いところがあります。対向車に気を付けて、ゆっくり走ると安心です。
1番からは急な山道、3番常泉寺へは約2.5km
1番四萬部寺から真福寺までは約2.1kmです。舗装された急な登り坂が続き、秩父札所の徒歩の道では三番目に大変な難所とされています。休みながら登れるよう、時間に余裕をもって歩くのがおすすめです。
山道なので歩きやすい靴を用意し、周辺では熊の目撃情報が出ることもあるため、秩父市の最新の情報を確かめてから出かけると安心です。足腰に不安がある場合は、本来の巡礼道とは異なりますが、光明寺で参拝することもできます。早春には、参道に紅白の梅と花桃が咲きます。
次の3番常泉寺までは約2.5kmで、歩いて40分ほどです。光明寺からは近く、徒歩15分ほどとされています。前後の札所の歴史や見どころは、1番四萬部寺の記事と、3番常泉寺の記事で紹介しています。
御本尊の撮影は禁止されている
秩父三十四箇所では、すべての札所で御本尊の撮影が禁止されています。境内の撮影は、現地の掲示や寺の案内に従ってください。
真福寺の参拝記録
秩父札所2番 真福寺には、2026年10月12日に参拝しました。秩父札所1番 四萬部寺と同じ日に連続で行きました。
花桃の参道と石段








光明寺で御朱印を受ける

真福寺がおすすめな人
昔ながらの巡礼道を歩いてみたい人
1番四萬部寺からの道は、急な登り坂が続く札所巡りの難所です。山道を歩いて札所にたどり着く、巡礼らしい道のりを体験できます。観音堂から光明寺へ下る道も含めて、秩父札所の歩く巡礼の雰囲気を味わえます。
秩父札所や百観音の成り立ちに関心がある人
真福寺は、長享の番付にはなく、のちに加わって34番目の札所になった寺です。この寺が加わったことで、西国・坂東・秩父の百観音がそろいました。札所の数がなぜ34なのかを、現地で考えるきっかけになります。
山の寺の静かな景色を楽しみたい人
無住の山の寺で、杉林に囲まれた観音堂が静かに建っています。早春には参道に梅と花桃が咲き、花の季節に合わせた参拝も楽しめます。
車で1番から順に札所を巡りたい人
1番四萬部寺から車で5分ほどの距離です。無料の駐車場が真福寺と光明寺の両方にあり、光明寺を経て3番常泉寺へも続けて向かえます。山道は道幅の狭いところがあるため、運転に慣れた人の方が安心して巡れます。
参考資料
- 2番 真福寺/秩父札所連合会/https://chichibufudasho.com/fudasho/shinpukuji/ /確認日:2026年10月22日(本尊、宗派、御詠歌、長享番付、札所に加わった経緯、古堂、江戸初期の移転、万延元年の火災、本尊の救出、観音堂の再建年、花、所在地、電話、駐車場、バス、光明寺から観音堂までの時間)
- 札所一覧/秩父札所連合会/https://chichibufudasho.com/fudasho/ /確認日:2026年10月22日(1番からと3番までの距離・時間、光明寺の所在地)
- よくある質問/秩父札所連合会/https://chichibufudasho.com/faq/ /確認日:2026年10月22日(受付時間、御朱印料、重ね印、定休日、駐車料、1番から2番への道、光明寺での参拝、雪の日の受付)
- 秩父札所について/秩父札所連合会/https://chichibufudasho.com/temple-pilgrim/ /確認日:2026年10月22日(長享の番付、天文5年の古札)
- 午歳総開帳/秩父札所連合会/https://chichibufudasho.com/soukaicho/ /確認日:2026年10月22日(御開帳、御手綱、記念印、散華、重ね印の記念印、拝観料)
- 秩父札所午歳総開帳 特設サイト/秩父札所連合会/https://event.chichibufudasho.com/ /確認日:2026年10月22日(総開帳の期間)
- 秩父札所連合会 公式Instagram(@chichibufudasho)/秩父札所連合会/https://www.instagram.com/chichibufudasho/ /確認日:2026年10月22日(御本尊の撮影禁止)
- クマ目撃等情報/秩父市/https://www.city.chichibu.lg.jp/4543.html /確認日:2026年10月22日(周辺の熊の目撃情報)
- 札所2番 大棚山 真福寺/秩父市/https://www.city.chichibu.lg.jp/4398.html /確認日:2026年10月22日(山号のよみ、市指定史跡と指定年、堂の規模、向拝の意匠、本尊の造りと高さ)
- 秩父三十四観音霊場/観光庁 地域観光資源の多言語解説文データベース/https://www.mlit.go.jp/tagengo-db/R1-01205.html /確認日:2026年10月22日(16世紀初めごろに札所に加わったこと)
- 秩父札所 2番 真福寺/秩父札所 おもてなし(多言語サイト)/https://www.chichibu-omotenashi.com/fudasho/fudasho34/temple_02/ /確認日:2026年10月22日(縁起、地名の由来、向拝の龍の彫刻)
- 真福寺(秩父三十四所観音霊場・札所2番)/ニッポン旅マガジン/https://tabi-mag.jp/sa0081/ /確認日:2026年10月22日(バスの所要時間、道幅)
- レンタカーで巡る秩父札所/埼玉県/https://www.pref.saitama.lg.jp/b0112/kanko-tiiki-info/renta8.html /確認日:2026年10月22日(真福寺と光明寺の間の山道、光明寺の仁王像)
- 小林祐一『秩父三十四ヶ所 札所めぐり 観音霊場巡礼ルートガイド 改訂版』(メイツユニバーサルコンテンツ、2022年)(縁起の鬼丸の岩窟、開基の時期、大棚の地名、16世紀初めに加わったこと、百観音にするためとする見方、光明寺の末寺となった時期、鉄巌禅師の中興、真言宗から曹洞宗への改宗、伽藍と万延元年の火災、観音堂の再建年と造り、向拝の龍、無住、光明寺の創建、バスの所要時間、梅と花桃、光明寺から3番までの時間)
- 秩父市教育委員会 現地説明板「市指定史跡 札所二番 大棚山 真福寺」(2026年10月 筆者撮影)(かつての伽藍と観音堂の向き・規模、火災での焼失、須弥壇と彫刻の転用、本尊の造り・高さ・時代、縁起、市指定の年、納経所の木札、花桃)


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